東京ロシア語学院創立７０年 現代日本でロシア語を学ぶ理由とは
sputnik© 写真 : Tokyo Russian Academy
2019年05月15日
内田樹の研究室
日本のシンガポール化について
日本人が英語、英語で飼育教育される毎日の中、やがてドル破綻を迎えた後には、中国とロシアの広域経済圏がこのアジアで出来上がる。
その時、日本人は真面に多言語化教育をしては来なかった、また、それを今に至ってもしてはいない所為で、今以上に、国内に於いても日本の大企業から小さな企業、個人経営の果てまで、「経営幹部」には大勢の「日本語が出来る外国人」が占有するだろう。
つまり、日本語が出来る中国人、日本語が出来るロシア人、日本語が出来るアメリカ人、日本語が出来るイギリス人、日本語が出来るフランス人といった調子で、だ。
しかし、それら海外資本の経営幹部には日常会話程度のアメリカ式英語が出来る日本人がいたとはしても、中国企業には中国語が出来る日本人も、ロシア企業にはロシア語が出来る日本人も、イギリス企業には上流階級が使う英語が出来る日本人も、フランス企業にはフランス語が出来る日本人も、企業のかじ取りを担う経営幹部としては極少数しかいないか、全くいないか、中堅社員しかいないだろう。
それが、母語の日本語教育と多言語教育を放棄して、占領英語教育による日本語破壊とそれによる合理的論理的思考力を70年以上に亘って衰退させて来た、敗戦国日本に於ける植民地経営の果実の一つである。
そして日本の99％層がそれを自覚できないままに、英語圏国際資本によって、これからも英語が唯一の世界の共通語だと信じ込まされて、それをいつも通りに時代の流れの所為にしながら、母国日本語語を抹殺された末に生じる歴史的な知的・文化的蓄積の消滅、シンガポールの様な英語力を物差しとした社会階級（それは英語力を最優先にする公用語であるが故に英語力以外の卓越した能力を持っても、それだけでは社会的には出世が望めないだろうから、奴隷や家畜として飼い殺しされるだけだ）を1％層の手で設定するのが、今、加速化が進む英語公用化政策の正体なのだ。
言語力、文化力、経済力、日本と世界の歴史、社会の主要な要素は全てが繋がっている。
そしてその中心で、詐欺資本主義社会の1％層内の核心に鎮座する0.1％層が、我々99％層を奴隷と家畜として邪魔になるまで、生かさず殺さず使役しているのである。
